前回の記事「サクライタケシの『少年ジャンプルポ(取材)漫画』を2冊紹介!」

 

牛帝(ぎゅうてい)先生の『同人王』という漫画を読みました。

 

 

 

今回はこの漫画を紹介させてください。

 

私が語りたいのは漫画の内容もですが、作者について主に語りたいです。

『同人王』は牛帝先生の意地によって完結された作品です。

 

『同人王』は1冊で完結しています。

500ページ近くあります。

非常に分厚い本です。

 

その500ページ近くの漫画を、牛帝さんはお金をもらいながら描き続けたわけではありません。

収入は一切なしで描き続けられました。

この漫画は趣味で描かれたものなんです。

 

牛帝さんはプロの漫画家ではありません。

素人が無料WEB漫画(ネットで配信できる漫画)に、4年もの歳月をかけて完結させた漫画なんです。

 

 

泥沼の人生から抜け出すために

 

先に牛帝さんが、どのようにして『同人王』を描き続けたのかについて説明させてください。

 

 

2005年、牛帝さんは当時23歳の漫画家志望でした。

しかし、人生行き詰ってました。

 

「25歳までに就職できなければ、もう正社員にはなれない」

そう両親から言われていて、25歳までに漫画家になるか、諦めて就職するか・・・人生の岐路に立たされていました。

 

自分の実力では漫画家になれそうにない・・・。

でも、社会不適合者でもあったので、正社員にもなれそうにない。

 

悩みすぎてパニックを起こすこともあり、悩みに悩んだ末、漫画の道を捨てて就活を始めました。

しかしそれも失敗。

 

けっきょく、行きつく先はニートでした。

 

 

「・・・もう一生漫画は描かない」

そのつもりでしたが、漫画以外にハマったものがなかったため、描かないと暇でしょうがない。

 

「まぁ・・・純粋に描くぶんにはいいでしょ」

 

 

2006年12月、WEB漫画サイト「新都社(にいとしゃ)」で『同人王』連載開始。

 

新都社は、2ちゃんねるから生まれたWEB漫画サイトです。

読むのも描くのも完全無料。

アマチュアが趣味で描いた漫画に、匿名のネット民がコメントをつけられるサイトです。

 

 

 

「ニート社」と言われてますが本当のニートは少なく、当時は中学生~大学生くらいの作者が中心だったそうです。

例えるなら学生の漫画家志望の人達が、お互いの描いた漫画を見せ合ってるような・・・それを大規模でやってるようなサイトだったそうです。

 

 

そのサイトで牛帝さんは、多くの作者たちとしのぎを削ることになります。

 

彼らの描くスピードはメチャクチャ速く、牛帝さんが『同人王』の構成を考え、ネームを切ってる間に、彼らは下描きもせずにどんどん描いていきます。

WEB漫画は、更新が早い方が絶対的に有利だそうです。

牛帝さんもそのスピードについていくため、必死に描き続けたそうです。

そうしていると、読者の中には『同人王』を褒めてくれる人も現れだし、牛帝さんは自分の漫画に可能性を感じるようになります。

 

「俺、やっぱプロになれんじゃね!?」

 

一度は諦めた漫画家への道を、もう一度目指しはじめます。

プロ漫画家のアシスタントになり、その人のもとで仕事もするようになりました。

 

しかし漫画家のアシスタントをすることで、『同人王』に費やす時間が無くなり、『同人王』の勢いは完全に失速。

ここから『同人王』が、牛帝さんの人生の足かせになってしまうことに・・・。

 

中だるみする『同人王』

 

漫画家への「夢」というのは、一度ハマると抜け出すのは容易ではありません。

漫画は歳をとっても描けるものなので、スポーツ選手のように、肉体年齢を理由に引退を考えたりが難しいのです(経験談)

 

その頃の牛帝さんは、漫画家への夢を捨てきれず、ダラダラとアシスタントを続けていました。

 

プロデビューできる気配はない。

かといってアシスタントを辞めて、アマチュア活動を専念する決心もつかない。

そもそも漫画を描く気がなくなっており、連載していた『同人王』を終わらせるメドが立たない。

そうやって貴重な20代を空費していきました。

 

 

 

ネットでは牛帝について、「牛帝? プロになれないに決まってらぁwww」などと陰口を叩く人も現れ、

先輩WEB漫画家には、「牛帝さんは『俺はまだ本気出してないだけ』を読んだ方がいい」と、説教されたりもしました。

 

 

そうこうしてるうちに、自分が当時「新都社」でライバル心を燃やしていた作家たちは漫画を描き続け、着実に実力と人気を伸ばしていきます。

彼らの中にはプロデビューする人も現われはじめ、同人誌の世界で人気を博す者も出はじめました。

 

一方、牛帝さんはというと・・・ダラダラ生きてるだけ。

中途半端に人気を得た『同人王』を、今更スパッと捨てることができず・・・かといって描く気も起きずで、完全にズルズル生きていました。

 

まわりからは、「『同人王』はとっとと捨てて、雑誌社への持ち込み用の漫画を描けよ」と言われ続けました。

 

 

正論ですが、それでも自分をここまで引っ張ってくれた『同人王』を、今更無下にスパッと捨てることはできませんでした。

 

『同人王』を終わらせることに集中

 

「『同人王』を終わらせない限り、俺は前に進めない。」

 

2010年になり、牛帝さんは今年中には『同人王』を終わらせることを決意し、『同人王』に集中します。

 

まずシナリオを最終話まで書き上げました。

これで中だるみしていた『同人王』の終着点が見え、だいたい何話で終わるかの分量が見えました。

あとはそのシナリオに沿って、ひたすら描くだけの作画マシーンになりました。

 

確実に作業を進めるための工夫もいくつかしました。

今までは、気が向いた日は8時間くらい描き、気が向かない日はサボっていました。

そうした気まぐれをやめ、週5日、1日2時間半ずつ、コツコツと描き続けることにしました。

本気になればもっと描けましたが、無理をすると明日の作業をする気が起きなくなる自分の性格を理解し、無理はしない。

5割の力で作業をし続けることに決めました。

 

他にも作業面で工夫を加えることで、更新頻度は激増。

『同人王』を決めた時間に描くことで、生活リズムは安定。

泥沼のようなダラダラした生活を抜け出すことができました。

 

そして2010年 10月20日、

『同人王』ついに完結。

 

お金のためではなく、ただ泥沼の生活から抜け出すために『同人王』を完結させたのです。

 

 

それから2年半後に書籍化の話が来て、『同人王』は販売されました。

作者の意地により完結させた漫画なのです。

 

 

『同人王』の物語を紹介

 

『同人王』の主人公は、作者そのものだと思います。

物語も作者の人生そのものに感じます。

 

以下、『同人王』の内容 ⇩

 

 

現実世界の女性には相手にされないことから、2次元の女性しか愛せなくなってしまった。

勉強ができない。

運動神経もない。

人付き合いも苦手。

そんな自分は漫画家になるしか道はないと、漫画家を目指しはじめる。

 

しかし持ち込みでは、編集者に現実を直視させられる。

 

 

一般的な漫画界に自分の居場所はないと感じた。

 

自分を癒してくれるのは2次元の女性だけ。

だったら自分を救ってくれるものに一生を捧げるべきではないか?

そう判断し、2次元のエロ漫画・・・同人の世界に足を踏み出す。

 

自分のサイトを作って、自分のエロ漫画を宣伝しだす。

しかし、全然アクセス数が伸びなかった。

 

自分の画力の低さでは、エロ漫画で人気など出やしなかったのだ。

 

 

 

だったら画力を伸ばすために努力すればいいのだが、それはしない。

自分には才能がなかったんだと絶望し、人気がある作家に嫉妬。

そんな惨めな自分を消し去りたいと、死ぬことを決意。

 

 

 

こんなダメな主人公を4人のキャラクターが引っ張ってくれる。

とくに献身的に引っ張ってくれるのがヒロインで、このヒロインがまた、かなり個性的な思考をしている。

 

特殊すぎる思考のヒロイン

 

ヒロインを一言で言うと、

「ダメ男に尽くすことで喜びを感じる女」

 

 

 

彼女は女性でありながら、エロ漫画を描いている。

同人界ではかなりの有名作家で、ペンネームは「肉便器」

 

彼女は昔、勉強のノイローゼから自殺した(未遂に終わったが、重度の記憶障害となった)、好きだった幼馴染を救えなかったトラウマがあった。

 

 

どうしたら幼馴染を救えたのか?

その答えを見つけるため、彼女は必至で心理カウンセリングの本を読みあさった。

そこからこんな一文を見つけた。

 

若者がすぐに自殺したがるのは、性エネルギーの過剰です。

だから説得するなど無駄です。

彼らの言葉は動物の鳴き声と思って無視し、性エネルギーを発散させることです。

 

 

この一文から彼女は、

「男性が犯罪欲求や破滅的欲求にかられるのは、精液が溜まってるから。」

「多くの男性を救うためには、溜まった精液をヌイてあげなければならない。そのために私は、エロ同人作家になって、多くのエロ同人で精液をヌくお手伝いをする」

 

そんな思考に至り、同人活動を始めた。

 

 

 

天使なのか、狂人なのか・・・かなり危うい思考の持ち主のヒロイン。

 

 

 

そんな彼女に手をひっぱられる形で、主人公は売れっ子同人作家になるため努力をし始める。

 

 

主人公のダメさ加減にリアリティーがある

 

上記でも話しましたが、私はこの漫画、主人公=作者だと思ってます。

牛帝さんは漫画家を目指してはいましたが、コツコツと努力を続けている人ではありませんでした。

そんな作者が描く漫画だから、主人公もコツコツと努力を続けられる人間ではありません。

 

ヒロインと主人公の妹が献身的に手を引っ張ってくれても、同人誌を描く手は進まず、ついゲームに熱中したり、

主人公の友人が少しづつ同人誌で結果を出していても、どうしてもやる気が出なかったり・・・。

 

 

 

それなのに変に自分の漫画に自信があったり(後に自分の実力を思い知る)、他人の漫画をあざ笑ったり・・・。

 

 

 

少年漫画の主人公のように、トントン拍子に成長などしません。

 

いろいろ痛々しい主人公ではありますが、この痛々しさに共感を覚えられる漫画家志望の人も多いのではないでしょうか?

私も共感を覚えたうちの一人です。

 

 

最後に

 

この漫画は正直、「面白い! おすすめ!」とは言えません。

Amazonでの評価レビューでは、絶賛する声と、こき下ろす声とで真っ二つに分かれてます。

 

プロではなく、素人が描いた漫画なので、粗削りに感じる部分は多々あります。

とくに最初の方は雑に描かれていて、見る気が失せる人も多いと思います。

ですが徐々に上手く、丁寧に描かれるようになっていきます。

 

この漫画を描くことで、作者である牛帝さんの技量がどんどん上がっているのを感じることができます。

「漫画は描かないと上手くはならない」というのがよくわかります。

 

 

作中には、主人公のライバルキャラクターが存在します。

主人公がヒロインの指導のもと、コツコツと模写から絵の技量を上げてるのに対し、ライバルは

 

「模写なんて練習は、素人が「俺は成長してる!」と、自己満足させるアメにすぎない」

「本当に上手くなるためには、漫画を描くこと。」

「描いてどんどん作品を発表し、才能のある同人作家たちと交流を深め技を盗むこと」

 

そう言ってます。

 

 

作者は、主人公に「模写」という基礎から練習させてますが、本当はそんなもんすっ飛ばして、どんどん漫画を描くことが大事。

それが本音ではないかなと、個人的には思ってます。

 

だからライバルは基礎という練習をしません。

どんどん作品を世に出すやり方で、技量を上げていきます。

 

 

 

この漫画は作者の体験談が詰まっています。

作者の「同人作家」としての体験談も詰まっているので、同人界に興味がある人は参考になると思います。

 

個性的な世界観をお持ちなので、誰にでもおすすめできる漫画ではありません。

ですが漫画家を目指されてる方は、読んでみる価値は十分にあるんじゃないかなー?と思います。

 

ほがらかな世界観の漫画なので、読みやすいと思います。

エロ同人誌がテーマの漫画ではありますが、エロシーンはほとんどないので、女性でも読める・・・かな?(ヒロインの思考にドン引きだと思うけど・・・)

 

興味が湧いた方は、是非読んでみてください。

 

 

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