前回の記事「村田雄介の『ヘタッピマンガ研究所R』 漫画家志望の人にお薦めの本」

 

『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』という漫画を紹介させてください。

 

 

この漫画は「巻来 功士(まき こうじ)」先生が、「週刊少年ジャンプ 黄金期」と呼ばれるジャンプが超売れていた時代に、少年ジャンプで生き残るために奮闘していた頃を描いた自伝となっています。

 

漫画家には「才能・努力・運」が必要だと言われています。

巻来先生は、明らかに運がなかった先生だな・・・と思ったのが私の感想です。

 

どう運がなかったのか、説明したいと思います。

 

少年ジャンプ黄金期とは?

 

漫画は年々売れなくなっています。

ネットで無断転載されたり、YouTubeやニコニコ動画の登場により、若者の興味は漫画から動画に移行したりと、漫画の注目度は年々落ちていってます。

 

紙での漫画自体人気が薄れて、雑誌の発行部数はどんどん落ちてます。

今でも漫画雑誌は「週刊少年ジャンプ」が一番売れてますが、発行部数は2017年には1号あたりの平均が191万5千部と、200万部を下回りました。

 

昔は600万部を超える時代もあったんです。

ピークは1995年(発売は1994年)の3-4号(合併号)、653万部

 

この頃のジャンプ連載漫画は、

 

・キン肉マン

・キャプテン翼

・キャッツ・アイ

・Dr.スランプ

・北斗の拳

・聖闘士星矢

・ドラゴンボール

・シティーハンター

・ジョジョの奇妙な冒険

・ジャングルの王者ターチャン

・スラムダンク

・幽遊白書

 

など、当時を知らない人でも聞いたことはあるタイトルがズラリと連載していた時代でした。

 

 

そんな人気漫画が並ぶ雑誌だから売れに売れます。

しかし新人漫画家にとっては、その隙間に入りこんで連載を続けるのは難しい時代でもありました。

 

そんな激闘の時代に、ジャンプで漫画を何作も連載していた巻来先生の自伝となっております。

 

 

〈ジャンプ黄金期の時代を闘っていた他の漫画家さんの記事〉

「地獄戦士 魔王」少年ジャンプ黄金期に潰された苅部誠の名作

 

雑誌に振り回された巻来功士

 

「巻来先生は運がなかった」と言いましたが、どう運がなかったのか?

 

巻来先生は、連載中に担当編集者がコロコロ変わったのです。

 

漫画家には担当編集者がついています。

その編集者と相談しながら自分の漫画を立ち上げたり、話のアイデアをもらったりします。

二人三脚で漫画を続けていくといってもいいでしょう。

 

だからお互いの信頼関係はとても大切です。

 

巻来先生がジャンプで奮闘しているときは、

『北斗の拳』『ジョジョの奇妙な冒険』『ドラゴンボール』『ジャングルの王者ターチャン♡』『幽☆遊☆白書』と、企画の段階から担当編集者と漫画家が、二人三脚で心を一つにして連載を続けていました。

担当が変わるときは、その漫画の人気が安定してきて、ベテラン担当が手を放しても大丈夫だと判断して、離されることが多いそうです。

 

 

しかし巻来先生は、連載がスタートしてすぐに変わる。

 

2話目で変わったり、また戻ったり、また変わったり・・・。

とにかく振り回されていた。

 

変わってた理由は、巻来先生にも原因があったのですが(性格が悪いとかではない)、会社の方針もあったんでしょうね。

 

だからって変わりすぎ。

変わるタイミングも悪すぎ。

とにかく運がないと感じました。

 

いったいどんな感じの漫画家人生だったのか、話させてください。

 

 

大学を中退して少年キングへ

 

1978年、九州の大学生だった巻来先生(20歳)は、大学をサボって漫画ばかり描いていた。

 

 

本当は青年漫画を描きたかったが、愛読していたのが少年誌だったので、習慣のように少年漫画を描いて雑誌に投稿し続けていた。

見事佳作の賞をもらったこともあったが、その雑誌はその後すぐに休刊。

今度は別の雑誌に漫画を投稿し続けるが、最終候補止まりでなかなか賞がとれなかった。

 

そんな時、所属していた大学の漫画研究会で、同じ大学で少年ジャンプの手塚賞 準入選作を貰った者が出たと聞く。

それが後に『キャッツ♥アイ』『シティーハンター』の作者となる北条司

 

 

北条さんは大学卒業すると同時に、少年ジャンプで連載することがすでに決まっていた。

それを聞き、巻来先生はライバル心を燃やし、大学を中退。

東京に出て本格的に漫画家を目指す。

 

すぐに「週刊少年キング」という雑誌に漫画を持ち込んでみたら好印象。

 

 

持ち込んだ後もいろいろあったが、無事連載が決まる。

 

東京に出てたった3ヵ月で、初の連載作品『ジローハリケーン』を連載開始。

 

 

ジローハリケーンを30話描いた頃、担当編集が「そろそろ別の作品描いてみない? 本格的な青春アクション漫画やろうよ」と提案。

ジローハリケーン終了の1ヵ月後、高校生探偵アクションコメディー『ローリング17(セブンティーン)』連載開始。

 

 

しかしこれがすぐに終了。

週刊少年キングが休刊となり、強制的に終了となってしまったのだ。

 

週刊少年ジャンプへ

 

大手なら休刊しなさそうだと思い、思い切って週刊少年ジャンプに持ち込んでみた。

その時漫画を見てくれた編集者が、『キャッツ♥アイ』『北斗の拳』を担当していたホリエ氏。(後に5代目編集長となる)

 

 

ホリエ氏の提案により、ロボット漫画を描いてみることに。

巻来先生はSFが大好きなこともあり、アイデアがどんどん湧いてきた。

 

読み切り漫画として『サムライR(アール)』を掲載。

 

 

これが読者アンケート2位と、結果を出す。

結果を出したにもかかわらず、サムライRは連載させてもらえなかった。

 

代わりに持ってこられた連載企画が、少年ジャンプで原作賞の入選をとった『メカバトラー ギルファー』

 

 

巻来先生は、サムライRが描きたかった。

しかしそこは雑誌の意向に従い『機械戦士(メカバトラー)ギルファー』を開始。

 

そのギルファー連載2回目の打ち合わせの時に、担当編集者が変わることに。

 

 

連載してこれからってときの最初のタイミングで即効変わるという最悪のタイミング。

しかも新担当のマツイ氏は、「ロボット漫画なんて嫌い」という爆弾発言をする。

 

 

機械戦士ギルファーは、たった10回で連載終了してしまう。

 

だからって、このマツイ氏が無能だということは全然なく、むしろ前担当のホリエ氏同様、非常に有能な編集者だといえる。

打ち合わせでは、巻来先生とも好きな映画で盛り上がれたりと、性格的にも相性が良かった。

 

しかしこのマツイ氏は、他の編集者に嫌われている可能性があった。

巻来先生は、そのとばっちりを受けることになる。

 

人気が出たのに連載終了

 

マツイ氏のもと、何度か読み切りを描いてみたものの、なかなか結果が出なかった。

そんななか、マツイ氏は少年誌の常識をぶち壊すような作品を提案。

 

 

少年誌、主人公、希望、栄光、すべて逆をいくような作品でないと、今のジャンプでは埋もれてしまう。

その意見を参考に、ダークな雰囲気を醸し出す『メタルK(ケイ)』が誕生

 

 

連載が決定した。

 

しかしこのメタルKは、連載たった2回目で雑誌の巻末(後ろの方)に掲載される。

巻末は人気がない漫画が掲載される位置。

 

たしかに1回目の読者アンケートでは、人気は高くなかった。

だからって2回目からもう後ろの方での掲載は、いくらなんでもおかしすぎる。

 

実はこのメタルKは、連載終了させることが最初から決まってたようなのだ。

 

 

このマツイ氏は、漫画のことで編集長と何度もケンカをしたことがあるそうなのだ。

 

 

その当てつけか・・・わからないが、とにかくメタルKの扱いはおかしかった。

 

連載5回目から人気が一気に上がり、メタルKを読んだ読者の方々から、ぶ厚い封筒に入った熱いファンレターが届くようになった。

終わらせる漫画では決してない。

 

 

なのに、連載10回目で終了とさせられた。

 

 

続きは次回で

 

1記事に収めるつもりだったんですが、思った以上に長くなりそうなので、続きは次回にまわします。

まだまだ巻来先生の苦難は続きます。

是非、次回も読んでくださると嬉しいです。

 

できれば実際に本を買って読んでもらえると、なお嬉しいです。

それではまた。

 

 

次の記事「巻来功士の『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』を紹介(後編)」