前回の記事「巻来功士の『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』を紹介(前編)」

 

前回では巻来功士先生の『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』を紹介しましたが、

 

 

紹介しきれなかったので、今回はその続きです。

 

前回の記事を読まずにこの記事を開いた方は、前回を読んでからこの記事に来ていただければと思います。

 

また担当編集者が変わる

 

人気が出ていた『メタルK』だったが、連載10回目であえなく終了。

 

次回作の構想を担当編集「マツイ」氏と練るのだが、なんと編集部は巻来先生に即連載させるというのだ。

ネームができたら、即連載が決定するらしい。

 

これには嬉しい反面、複雑でもあった。

そんなに早く連載させてくれるなら、なぜ人気が出てたメタルKを終わらせたのか?

メタルKでよかったじゃないか。

 

 

編集上層部の考えは、わけわからなかったが、とにかく次回作に向けてマツイ氏と相談する。

しかし、マツイ氏の様子がおかしい。

なんか投げやりというか・・・やる気を感じない。

 

数日後に巻来先生が次回作を考えてマツイ氏に相談。

「それでいこう!」

巻来先生から次回作の内容を聞いて、マツイ氏は即GOサインを出した。

 

ネームができて、トントン拍子で連載が決まる。

SFホラー漫画として誕生した新連載『ゴッドサイダー』が開始してから、マツイ氏がなぜやる気がなかったのかがわかる。

担当が変わるのだ。

 

 

マツイ氏は、新連載が始まったら巻来先生の担当ではなくなることを知っていたのだ。

どんな漫画を描こうが、それは新しい担当の仕事になる。

自分とは関係なくなる。

だから投げやりだったのだろう。

 

また担当が変わったことに孤独感を感じた巻来先生は、意地でも連載10回で終わらせないために闘志を燃やす。

翌日、住居兼仕事場の安アパートに来た新しい編集者「クンタ・スズキ」氏の第一声。

 

 

この編集者、本名は「スズキ」なのだが、当時流行していたアメリカのテレビドラマ『ルーツ』の主人公「クンタ・キンテ」に似ていることから、あだ名が「クンタ」となったそうだ。

このクンタ氏は、漫画の打ち合わせ中にラジオで競馬を聴いたりと、一見すると不真面目なところが見える。

しかしネームはしっかりと見て、意見をくれる。

 

 

新連載のゴッドサイダーはSFホラー。

SFとかホラーとかは、好きじゃないしわからないと言ったクンタ氏。

前担当のマツイ氏のように正直に話してくれる新担当に好感を覚え、なによりもネームを読んでいたあの真剣な表情を見て、この人とならやっていけると感じた巻来先生。

ゴッドサイダーの内容を大声で褒めてくれるクンタ氏にやる気をもらい、中位の人気でなんとか連載10回目を突破。

 

しかし数十話連載して、また担当編集者が変わる。

 

 

また担当と新しく信頼関係を築いていかなくてはならないのかと、やる気をそがれたが、新しい担当は前担当の「マツイ」氏だった。

 

 

その後、なんとか連載を続け、ゴッドサイダーは連載50回を突破。

少年ジャンプでは連載50回、100回、150回・・・と授賞式が催される。

その授賞式に参加し、多くのジャンプベテラン漫画家と話すことができた。

 

そんなめでたい式にも参加していたが・・・また担当編集者が変わる。

マツイ氏は他誌にとばされることになったというのだ。

やっぱり嫌われていたのだろうか・・・。

 

 

そして新しい担当編集者が仕事場に来た。

ここからまた波乱が訪れる。

 

 

担当編集者と合わない

 

 

この担当編集者「K」氏を見たとき、巻来先生は嫌な感じがしたそうだ。

その理由は打ち合わせの時にはっきりした。

 

生理的に好かないというか・・・相性が悪かったのだ。

 

 

そしてこのK氏は、

 

「このままじゃ終わっちゃうよ? 頑張らないと連載終わっちゃうよ・・・?」

 

ネチネチネチネチ脅してくるのだ。

 

 

このように脅すことで、作家のやる気を出させようとしてるのだろうが・・・

 

 

信頼とやる気がそがれていくだけで、巻来先生には逆効果だった。

 

その後、『ゴッドサイダー』は1年半の連載で終了した。

 

 

ゴッドサイダー連載終了後、単行本が立て続けに発売され増刷もされた。

その印税であっという間に貯金が増えた。

そのお金で運転免許証を取ったり、合コンしたりと、今までできなかったことをやった。

 

しかし、担当K氏とは相変わらず相性が悪いまま。

 

 

「すべて一人でストーリーを考える。誰の協力もいらない」と心に決め、次回作に取り組む。

 

ゴッドサイダー終了から半年後、『ザ・グリーンアイズ』連載開始。

 

しかし3ヵ月で終了。

 

 

その後はK氏から3週間連絡がないまま。

「見捨てられたかな?」と思ってたとき、電話が鳴る。

 

その電話で巻来先生の人生は変わる。

 

念願の青年誌へ

 

その電話は前担当のクンタ氏だった。

彼は少年ジャンプから「スーパージャンプ」へと異動になり、青年誌へと移ったそうなのだ。

そのスーパージャンプで、読み切りを描いてみないかとのお誘いだった。

 

 

その誘いに巻来先生は飛びつく。

久ぶりのクンタ氏との打ち合わせが嬉しく、夢にまで見た青年誌とのことで俄然やる気が出る。

 

映画大好きな巻来先生は、「映画のような内容を描きたい」と常々思っていた。

しかし少年誌・・・とくに少年ジャンプでは「友情・努力・勝利」と、いろいろと制約がある。

青年誌なら残虐なものやエロスなものでも描ける。

 

精神的に自由になれて生み出された『ミキストリ ―太陽の死神―』は前・後編ともに読者アンケート2位という高順位を獲得した。

 

 

この勢いに乗って、スーパージャンプでミキストリを連載させてくれとクンタ氏に願い出る。

しかし巻来先生は、少年ジャンプとの契約がまだ半年以上残っていた。

少年ジャンプは有望な作家を「サンデー」や「マガジン」などの他誌で描かせないよう、年間契約している。

その間、年間契約料をもらえる。

 

クンタ氏は「少年ジャンプで『ゴッドサイダー』の他に、もう1本ヒット作を放ってからうちに来た方がいい!」と提案。

しかし巻来先生の頭の中は、「ミキストリが描きたい」でいっぱいだった。

そんな状態なので、4ヵ月ぶりに会ったK氏との打ち合わせは全然うまくいかず・・・巻来先生はとある決断をした。

 

担当を変えてくれと願い出たのだ。

 

相談したのは主任に昇格していた前担当「ホリエ」氏。

ホリエ氏は「人手不足だから新人になるけどいいかい?」と言い、それを了承。

 

 

数日後に担当は「O」氏となった。

 

しかしこのO氏・・・漫画について何もわからなかった。

 

なぜ漫画について何もわからないような人が、少年ジャンプという大手漫画雑誌の編集者なんかやるのか?

その理由はいろいろあるが、それについては今回は省かせてもらうとして・・・新担当O氏とは、ネームの相談ができなかった。

そんな状態だから、描いても描いてもネームは通らなかった。

 

 

 

その翌年の少年ジャンプ新年会。

ジャンプの発行部数が500万部を突破し、600万部に迫ろうとしている最も勢いがあった時期だった。

その新年会で、少年ジャンプの新人作家達と一息つくため外で話す。

 

彼ら新人作家は、少年ジャンプの人気に浮かれていた。

少年ジャンプをべた褒めだった。

彼らはまだ、少年ジャンプで連載を持っているわけではない。

それなのにジャンプの売り上げを自分のことのように喜んでいる。

その姿は漫画家というよりも、集英社の社員みたいで違和感を覚えた。

 

 

「ジャンプの漫画じゃないと漫画とはいえない」

 

そんなふうに他の雑誌漫画を二流だと決めつける彼らに、興味本位で聞いてみた。

 

「君たち・・・もしジャンプで描けなくなったらどうする?」

 

 

「その時は漫画をやめますよ」

「ジャンプ以外で描いても意味ないですよ」

 

 

ジャンプで育てられた新人作家たちは、まるでジャンプに洗脳されているようだった。

 

[自分が描きたい漫画=ジャンプの社風にそった漫画]

 

巻来先生は無理だと感じた。

会社の方針「友情・努力・勝利」に殉じた漫画なんてもう描きたくない。

というか最初から描きたいわけじゃなかった。

 

 

「俺はもう、ただ強さを競うだけの単純な漫画なんて描かない!!」

 

「戦って死んでも、そのたびに友情や愛の力で蘇る漫画なんて描かない!!」

 

 

そう決めて、巻来先生は少年ジャンプとの契約を1989年に解消。

 

1990年にスーパージャンプで『ミキストリ -太陽の死神-』を連載させた。

 

 

 

これが巻来先生が、少年ジャンプ黄金期のなかで闘い続けた歴史です。

 

 

最後に

 

前回、今回と巻来功士先生の『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』の内容を語りましたが、編集者とのやりとりにスポットを当てて紹介しました。

他にも『北斗の拳』の原哲夫先生のアシスタントをしてたことや、『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生との出会いなど、見所はいっぱいあります。

是非、本書を直接読んでいただけると嬉しいです。

 

絵柄がちょっと好きじゃないという人もいるとは思いますが、漫画家を目指されてる方は絶対参考になりますし、そうじゃない人も楽しんで読めると思います。

 

でも一番読んでほしい人は、編集者の人なんですよね。

 

それはこの漫画の最後に載っている「ホリエ氏と巻来先生の対談」を読んで強く思いました。

すごい勉強になることを話しておられるんですよ。

 

本当はここでこの本の紹介を終えようと思ったんですが、対談の内容について話したいことがあるので、次回で対談についての内容や、私の思ったことを話させてください。

興味のある方は是非、次回も読んでいただけると嬉しいです。

それではまた。

 

 

次の記事「少年ジャンプで巻来功士の担当編集者がコロコロ変わってた理由」