前回の記事「少年ジャンプで巻来功士の担当編集がコロコロ変わってた理由」

 

『漫画編集者』という本を読みました。

 

 

この本は漫画家ではなく、漫画編集者にスポットを当てた本となっています。

5人の現役編集者の方々にインタビューし、その内容を載せた本です。

 

・どのような経緯で編集者になったのか?

・漫画家との打ち合わせで心がけてること

・担当作家とのエピソード

・今の漫画業界、今後の漫画業界についての危機感

・編集者は必要か?

 

などをインタビューしてます。

 

漫画家については知ってるけど、編集者ってどんなことしてるんだ?

何を考えて漫画に携わってるんだ?

 

そういった疑問をもってる方にオススメできる本です。

 

 

本の出版は2015年 5月。

ちょっと古い本ですが、漫画が雑誌からネットに移り変わる新しい時代について、編集者の対応の変化や、編集者そのものの必要性なども語ってくれています。

 

今回はこの本について、私の感想も含めて紹介させてください。

 

内容は濃いが、読みづらいかも?

 

この本のAmazon購入者レビュー、評価はあんまり高くないです。

 

 

内容がつまらないというわけではないです。

ただ、「読みづらい」という感想が多いです。

 

この本は編集者へのインタビューを、そのまま文章にしたような内容になっています。

 

「あなたは何故、編集者を目指したのか?」

「どういう経緯で編集者になったのか?」

「編集者での主な仕事は?」

「担当した漫画家はどんな人だった?」

「編集者について思うことは?」

 

このように順序を追って質問し、その内容を載せているのではなく、

編集者の思いつくこと、喋りたいことを好きに喋らせ、その内容をそのまま載せてる感じです。

 

なので、話してる内容がポンポン変わるようなことがあります。

ボーっと読んでると、「今何の話をしてるんだ?」っていう感じになってしまうこともあります。

だからちょっと話がゴチャゴチャしてる本という印象を受けました。

 

ですが今回、記事にするために意識して読み返してみると、ちゃんとそれぞれの編集者にテーマを持って、インタビュアーは質問されていることがわかりました。

 

 

5人の編集者にインタビュー

 

インタビューをしたのは2014年中頃~末。

5人の編集者にインタビューしています。

 

 

1人目、「猪飼 幹太」【コミックリュウ】所属

 

この人は主に、

 

「どのような経緯で編集者になったのか?」

「打ち合わせで心がけるようになったこと」

「フリーの編集者について」

「雑誌、【コミックリュウ】について」

「漫画編集者は必要か?」

 

これらの内容を主に話しておられます。

担当した漫画家の話はほとんどなく、編集者猪飼さん本人についてを中心にインタビューしてる内容です。

 

 

2人目、「三浦 敏宏」【ヤングマガジン】所属

 

「担当した漫画家のエピソード」

「マガジン編集部について」

「打ち合わせで心がけてること」

「漫画編集者は必要か?」

 

「マガジン」という有名雑誌に所属しておられるので、担当した漫画家は知名度の高い作家さんもいます。

その人たちとのエピソードや、マガジン編集部についてなどを中心に話しておられます。

 

 

3人目、「山内 菜緒子」【ビッグコミックスピリッツ】所属

 

「雑誌の休刊について」

「「松田菜緒子」先生との『重版出来!』の連載について」

「旧小学館の壁の「ラクガキ大会」について」

「廃れていく漫画界への危機感」

「漫画編集者は必要か?」

 

この人は「ヤングサンデー」という有名な雑誌の休刊を体験しておられます。

その体験から、編集者としてのいろんな見方が変わったそうです。

それについてが主です。

 

 

4人目、「熊 剛」【Gファンタジー】所属

 

「編集者になったきっかけ」

「部数が落ちる【Gファンタジー】での対応」

「『黒執事』で有名な「枢やな」先生との二人三脚」

「新人育成について」

「漫画編集者は必要か?」

 

この人は主に「枢 やな」先生と、どのようにして『黒執事』を立ち上げたかの苦労話が中心です。

個人的にはこの人の話が一番面白かったです。

 

 

5人目、「江上 英樹」【IKKI】所属(休刊になった)

 

「漫画編集者になった経緯」

「大御所作家とのエピソード」

「作家の面白エピソード」

「休刊になった【IKKI】について」

「漫画編集者は必要か?」

 

この人はベテラン作家さんとの付き合いが多かったようで、その作家さんとのエピソード話が多いです。

それと休刊になった「IKKI」についても話しています。

「IKKI」という雑誌は、個人的に思い出がある雑誌なので面白かったですね。

 

 

編集者といっても年代や所属してる雑誌によって、体験している環境が全然違うので、それに合った質問をインタビュアーはしておられます。

それぞれ違ったエピソード話が面白かったです。

 

本自体は344P(ページ)もあり、内容も非常に濃密です。

漫画業界に興味がある方には是非、オススメしたい本です。

 

1人目、猪飼【コミックリュウ】

 

「この本おもしろいよー。オススメだよー。」と言っても、話してる内容を説明しなければ面白さは伝わりませんね。

なので、もう少し具体的に内容を説明させてください。

 

※ここからはテンポを上げるため、敬語を外します

 

 

1人目、猪飼(いかい)さんは最初から漫画編集者だったわけではない。

 

最初は【ぱふ】という雑誌に入社(後に編集長となる)。

 

 

当時はネットがない時代だったので、その雑誌では主に女性向けの漫画を宣伝したり、オススメしたりしていた。

漫画家や漫画雑誌社への取材もしていた。

 

「キャプテン翼」のBLっぽいカップリングをしたら女性に受けたりした。

昔から「腐女子」と呼ばれる属性の人はいたようである。

 

ネットがなかったので、漫画を紹介するだけで企業でも商売としてやっていけたが、ネットができてからはそういったことは一個人でもできるようになった。

時代の移り変わりを感じ、15年務めた【ぱふ】を辞める。

 

 

2004年に人を頼って【ヤングキングアワーズ】の編集者に。

 

 

しかし全然成果を出せなかった。

 

【ぱふ】の時代は漫画家へのインタビューで、「こういうプロセスを経て、新作を描きました」という成功例ばかり聞いている。

失敗例の現場には立ちあってこなかったので、「漫画家育成」「新作立ち上げ」の壁にぶつかる。

 

「もっと簡単に面白いネームが出来ると思ってたのに・・・」完璧な誤算。

 

ヒットらしいヒットが出せず、【ヤングキングアワーズ】を2年で退社。

 

 

その後、【Comic REX】という新しい少年誌が立ち上がり、そこで半年間お世話に。

 

 

 

その後、また人の縁で【コミックリュウ】という雑誌へ。

 

 

その雑誌は編集長意外、全員フリーの編集者だった。

 

フリーの編集者とは?

 

会社に属する編集者ではなく、漫画家のようなフリーの立場の編集者。

 

毎月決まったお給料は出ない。

福利厚生もないので保証がない。

厚生年金ではなく、国民年金なので、年金も少なくなる。

 

その代わり、会社内での異動がない。

会社の都合で担当を変えられたり、雑誌を移り替わることはなく、担当してる漫画家が「この編集者のもとでやりたい」と言い続けてくれる限り、担当を変わることはない。

 

担当してる漫画家が連載を勝ち取ればお金を貰えるし、連載が続く限り貰い続けられる。

コミックスが売れればお給金も上がる。

 

つまり漫画家と同じような、結果が全ての編集者。

 

取材をした時、猪飼さんの担当してる連載作品数は12本

普通の漫画雑誌だったら多すぎる。

 

しかし漫画もアナログからデジタルで作るようになり、原稿の受け取りもすぐにできるので、打ち合わせも一人につき、月一回するかしないかで時間もかからないらしい。

 

出来る編集者を演じていた

 

最初の頃は漫画編集者として、そうとう壁にぶつかったらしい。

 

持ち込みを積極的に受けたり、コミケ(同人即売会)やコミュティア(オリジナル漫画即売会)を見て回ったりした。

しかし漫画編集者の仕事は、やり方を特別に教わるわけではないので、最初の打ち合わせの頃は「それっぽいことを言おう」という感じで、出来る編集者を演じてしまっていた。

 

「セリフがどうだ、コマ割りがどうだ」と、細かいところでネームを直させる。

今思うと「そんな直しは最後でいいだろう」というところを積極的に直したりして・・・。

 

根本的に面白くないネームは、直したところで良くはならない。

だったらすべてボツにしてしまって、「そもそもあなたはどんな漫画を描いたら面白いんだろうか?」というところを、飯でも食いながらえんえんと語り合った方がいい。

 

「面白いものは、面白い」

「つまらないものは、つまらない」

「わかりにくいところは、わからない」

 

正直な感想を話す。

嘘が見破られると、作家からの信頼を失ってしまうから。

 

「僕はあんまり頭が良くないから、難解な漫画はわからないんだ。でも、僕がわかる漫画は読者全員に伝わるだろうから、そういうネームにしてもらえたらありがたい。」

そう言うと、「こいつは馬鹿だからもういいや」と逃げられてしまう場合もあった。

 

しかし無理にできる編集者を装って、自分の苦しいアイディアで作家をかき回すより、自然体で読み、読者の立場に立って感想を話す。

今はそういった力を抜いた打ち合わせのスタンスに変わったそうだ。

 

漫画が売れなくなって、編集者は変わった

 

昔は漫画がとぶように売れた。

90年代の頃は、新人でも単行本が5~10万部とか売れてた。

だから編集者たちは、漫画を売ることに躍起になってはいなかった。

 

【ぱふ】の時代に編集部に取材に行った時も、無視はあたりまえ。

「うるせぇなぁ。面倒くせぇのが来たなぁ」ともよく言われてた。

新連載の話を伺いたく取材して、「じゃあコーヒーでも飲もうや」と言ってくれる編集さんは、各編集部に一人いればいい方だった。

 

今はそのあたりがガラッと変わった。

漫画が売れなくなったので、今の編集者は昔に比べてすごく頑張っている。

どの編集者も、書店をまわって漫画を置いてもらったり、宣伝したりしている。

そうしなければ売れないどころか、漫画の存在すら知ってもらえないのだ。

 

今は漫画の数自体が増え、ネットという最大の娯楽が出来てしまったので、アピールしなければ誰にも読んでもらえないのだ。

 

 

続きは次回で

 

一人目を紹介した段階で、すでに長くなってしまいました。

本当はもっとササっと紹介するつもりだったんですが、面白い内容はつい紹介したくて・・・。

これでもかなり端折ってます。

 

二人目以降は次回に回します。

興味のある方は是非、次回も読んでいってください。

できれば直接本を読んでいただけると嬉しいです。

 

とても面白い本です。オススメします。

 

 

次の記事「木村俊介の『漫画編集者』という本の感想と紹介(中編)」