前回の記事「今までありがとうございました! やっぱYouTubeいきます!!」

 

高橋ツトム先生の『スカイハイ』という漫画を紹介させてください。

 

 

紹介というか・・・勝手に語らせてください。

 

 

『スカイハイ』は3種類の漫画が存在します。

 

『スカイハイ』全2巻

 

 

 

『スカイハイ 新章』全4巻

 

 

 

『スカイハイ カルマ』全2巻

 

 

 

どれもすごく面白かったんだけど、私が一番好きなのはこの2冊。

 

 

これが私の中で最高に良かったです。

なので今回の記事では、この2冊を中心に語らせてください。(他の本については、記事後半で語ります)

 

 

スカイハイの基本設定

 

この漫画は「死んだ人間」を中心に描かれている。

 

死んだ人の魂の中でも、不慮の事故や殺された人の魂は、「怨みの門」という門に自然にたどり着く。

その門の前には、門番「イズコ」という女性が立っている。

 

 

 

その女性は、3つの選択肢をせまってくる。

 

1.死を受け入れて天国へ旅立つ

 

2.死を受け入れず、霊となって現世をさまよう

 

3.現世の人間を一人、呪い殺す

 

 

天国へ行けば輪廻転生して、また新しい人生を歩むことになる。

生まれかわりとか嫌なら、浮遊霊となって地球でフラフラする魂にもなれる。

 

じゃあ人を呪い殺すという選択肢は?

こちらにはリスクがある。

 

人を殺めたり、自殺した人間は地獄へ行く。

それは呪い殺した魂も同じ。

地獄では生まれかわることなく、永遠に苦痛が続くことになる。

 

わけも分からないうちに死んだり、殺されたりした魂は、わけも分らない門の前に立たされ、わけの分らない選択肢を迫られることになる。

 

 

 

期間は12日間。

その間に選ばなければならない。

 

作者の「怒り」から生み出された漫画

 

ニュースとか見てると、世の中には理不尽に殺される人が多いと感じる。

 

「ムカついたから殺っただけ」とか、

「むしゃくしゃしてたから殺った。誰でもよかった」とか、

飲酒運転で酔っぱらって運転してるバカが、勝手に突っ込んできてひき殺されたり、車に衝突して、相手の車にいる人が亡くなられるケースも多い。

 

こういった報道を聞くと、怒りを覚える人も多いだろう。

作者、高橋ツトム先生も同じだった。

高橋先生が『スカイハイ』を描いたきっかけは、「怒り」だとおっしゃられている。

 

連載を始めたきっかけは「怒り」だった。

ある事件の被害者が、あまりにも浮かばれないと思い、「呪い殺す」という漫画を描いた。

この世の中に、吐き気のするようなマヌケな事件が絶えない限り、オレは『スカイハイ』を描き続けるだろう。

 

—スカイハイ新章 4巻より―

 

 

「それじゃあこの『スカイハイ』という漫画は、理不尽に殺された魂が復讐で呪い殺して、読者をスッキリさせる漫画なのかな?」

 

そう思うだろう。

そういう話もある。

しかし、そういう話は少ししかなかったりする。

 

「殺された⇒ 呪い殺してやった⇒ 被害者の無念は晴らされた」

 

『スカイハイ』はこんなシンプルな話にはなっていない。

 

人間の人生は簡単にできてはいない。

人間というものはもっと複雑で、いろんな感情の中で生きている。

 

現実世界の人間の複雑な感情や人生を、見事なまでに描いている漫画なのだ。

だから面白いのだ。

 

 

本当にその人は善人?

 

漫画やアニメなどの創作物語ではよく、

 

被害者=善人

加害者=悪人

 

このように立ち位置をハッキリさせている。

こうすることで作者は、善人である被害者をひどい目にあわせ、読者を悲しませたり怒らせたりする。

悪人である加害者に天罰をくらわせ、読者をスッキリさせたりする。

 

少年誌ではとくにそうなっている。

子供はまだ人生経験が未熟なので、そういう物語で満足する。

しかし人間長く生きてると、世の中そんなシンプルではないということがわかってくる。

 

会社や学校では真面目な人が、SNSなどでとんでもない暴言吐きまくってたりする。

虫も殺せないような人が、影ではグロ画像とか蒐集(しゅうしゅう)してたりする。

善人そうな人が、裏ではSM変態プレイにハマってたりもする。

 

こういった事実を聞くと幻滅するだろうが、人生経験豊富な人なんかは、

 

「まぁ・・・人間だもんね」

 

いろんな人間を見てきたので、逆に納得できたりする。

 

 

 

私はひねくれてる性格だからか、よく漫画とかで「何の罪もない人を巻き込みやがって!」とかのセリフを読むと、

「本当にその人は何の罪もなかったの? お前の知らないところで、えげつない事やってたかもしれないよ?」

とか思ってしまう。

 

こういった私のようにひねくれてる人間には、これから紹介する2冊の『スカイハイ』をお薦めする。

 

スカイハイとはどんな物語か?

 

 

この『スカイハイ』の2冊は、善人が救われて、悪人が懲らしめられるようなシンプルな物語ではない。

だからって、悪人が救われるような胸糞悪い話でもない。

 

なんていうか・・・リアル(現実的)なのだ。

 

言葉でうまく説明できないので、一つ物語を紹介しよう。

 

 

会社帰りのとある青年が、通り魔に女性が襲われてる現場に出くわした。

 

 

 

フィクションならば通り魔をやっつけて女性を救い、めでたしって感じだろう。

しかしノンフィクションなら、そんな勇気のある男性はどれほどいるだろう?

私は・・・自分でもどうするのか、その場に立ってみないとわからない。

たぶん回れ右して、見なかったことにする可能性が高いけど・・・。

 

物語に登場する青年は助けた。

頭がマヒしたかのように凶器を見ても現実感が湧かず、とっさに「彼女を助けなきゃ」と走った。

 

 

 

身を挺して助けた結果・・・彼は刺されて死んでしまった。

 

 

 

命がけで女性を助けた彼は、世間でヒーロー扱いされるだろう。

警察がこの事件について調べるために、刺されて死んだ彼のアパートを捜索。

その捜索には、青年のご家族にも許可を得て同行いただいた。

 

青年の部屋で不審なビデオを発見。

ご家族の同意のもと、そのビデオを青年の部屋で再生してみた。

 

・・・そのビデオは女性のトイレを盗撮したビデオだった。

 

 

 

命がけで女性を助けたヒーローは、盗撮という性癖があったのだ。

 

 

 

青年の葬式には、命を助けられた女性と、その父親も参加した。

霊体となった青年も来ていた。

 

そのお葬式にはマスコミも駆けつけていた。

女性を守ったヒーローが、盗撮や盗聴が趣味だったのだからいいネタになる。

助けられた女性にコメントを貰おうと、青年の性癖を女性にばらす。

刺殺された青年は霊体の姿で、その会話をそばでずっと見聞きしてた。

 

 

 

青年の怒りは、自分を殺した男に向かう。

その男のもとに連れて行ってくれと、青年のそばにいる門番イズコ(幽体)に頼む。

 

 

 

しかしその男はすでに、首をくくって自殺していた。

自殺して、ただその場でブツブツ言うだけの、自我の崩壊した地縛霊となってしまっていた。

 

 

 

助けられた女性はその頃、男に抱かれていた。

抱かれながら助けてくれた青年について口にする。

 

「女の敵よ。盗撮なんて最悪の行為だわ。」

 

助けられたことについても、

 

「そんなの当たり前よ。人間なんだから。」

 

人間なんだから命をかけて助けることなんて当たり前だと、青年の命がけの救出を特別な行為だと思っていなかった。

 

 

こんな女を助けて僕は死んだのか・・・。

 

青年の怒りは、命を助けた女性へと向けられる。

 

 

 

命を助けた者も、助けられた者も、きれいにスッキリ美談とはならないのが、リアルな人間だと思う。

どうしても見返りを求める人が多いから、新たなトラブルに発展する場合も多い。

人間という複雑な思考をした生き物が織りなす、リアリティーのあるこの物語が、私を魅了してやまない。

 

だからって、その青年が最終的に助けた女性を呪い殺して終わりとなったら、ただの胸糞悪い話だろう。

そこはやっぱり、最後には救いが待っている。

 

救いがない話もあるけど、そこはキャラクターの性格を尊重したうえでの結末にしてある。

 

スカイハイ 新章

 

『スカイハイ』について、私的に一つ不満がある。

それは、たった2巻で終わってしまったこと。

 

2001年から「週刊ヤングジャンプ」で連載された『スカイハイ』は、たったの2巻で終わってしまった。

なぜたった2巻で終わったのだろう?

人気がなかったのか?

こんなに面白いのに?

この漫画を面白いと感じる私の感性がおかしいのか?

それとも編集部の意向か?

だとしたら、終わらせた編集部はバカなのか?

 

非常に・・・非常~にもったいないと思った。

 

その約2年後に、また週刊ヤングジャンプで『スカイハイ 新章』として連載が始まった。

 

 

また連載が始まったから、その不満は引っ込んだと思うだろう。

だが引っ込まなかった。

 

『スカイハイ 新章』は、私が好きだったスカイハイとはちょっと違ったから。

 

『スカイハイ 新章』も、前作の『スカイハイ』と設定は同じ。

だが新章の方は、前作よりも救いのある話が多い。

てか、救いのある話がほとんど。

きれいな結末を迎えるため、話がキッチリまとまってる感じ。

前作のようなダークな人間模様が控えめに描かれている。

 

いや、新章もすごく面白かったんだよ?

面白かったんだけどさぁ・・・なんか読み終わって「あ~面白かった」で終わるだけの感じ。

前作のように読み終わったあとに「人間って何だろう?」「人生って何だろう?」みたいに考えさせられる感じじゃないのだ。

 

前作より、新章の方が好きって人の方が多いかもしれない。

やっぱり救いのある話の方が読みやすいだろうから。

 

でも私は、リアリティーのある話の方が好き。

たとえ救いのない話でも、そっちの方が好き。

だから前作の方が好き。

 

あの前作のノリで、あともう2冊分くらい描いてほしかった・・・。

 

 

スカイハイ カルマ

 

『スカイハイ カルマ』

 

 

こっちの方もすごく面白かった。

 

『スカイハイ カルマ』は、『スカイハイ』のような1話、2話で終わるような短編の話ではない。

全2巻で一つの物語になっている。

 

こっちの方もすごく好きなので、一つの記事にして紹介しようと思ったんだけど・・・やっぱやめといた。

こっちの方は、好む読者を大いに選ぶだろうから。

 

幽霊・死後の世界・生まれかわり・神など、どっぷりスピリチュアルの世界になる。

『スカイハイ』は「呪い殺す」ということに止まっていたが、『カルマ』の方は、もっとスピリチュアル的な話になる。

 

私は「霊」だとか「神」だとか「死後の世界」だとかの存在を、バリバリ信じてるタイプの人間なので、この物語をスラスラ読めた。

たが、世の中にはそういった話を毛嫌いする人も多い。

なので、細かい紹介はやめておこうと思う。

 

スピリチュアルの話を受け入れられそうな人は是非、読んでみてほしい。

マジで面白いから。

 

 

警察がカッコイイ

 

ちょっとこれは余談なんだけど、高橋ツトム先生の漫画は、警察がカッコイイ漫画が多い気がする。

『スカイハイ』で登場する警察もカッコイイ。

カッコイイというのは外見がではなく、人格的なカッコよさ。

 

他の人の漫画では、警察って何かあまりカッコよく描かれないのが多い気がする。

一般市民に対して失礼なことを平気で言ったり、セクハラまがいのことをしたりと、嫌な印象を受ける描き方をする漫画が多い気がする。

警察だけでなく、教師もそう。

現実世界では真面目な印象を受ける公務員を悪く描くことで、読者に意外性を持たせる策略なのかもしれないが、昔から悪く描かれる漫画が多いから、今では意外でもなんでもなくなってしまった。

 

しかしこの『スカイハイ』では、警察がカッコイイ。

犯人を捕まえるために必死に捜査したり、死んだ少女を弔ったり。

 

 

 

高橋ツトム先生は昔、暴走族をやっていた時期があったそうだ。

いろいろと警察のお世話になったのかもしれない。

その時にカッコイイ警察を多く見たのかも。

それで高橋先生の漫画は、警察がカッコイイのかもしれない。

 

最後に

 

『スカイハイ』はダークな感じの絵柄なので、絵柄がダメという人も多いだろう。

あと、「絵が雑に描いてある」という理由で、低評価をつける読者もAmazonのレビューにいた。

私的には、あの雑さも含めて味のある絵に感じるのだが・・・。

まぁ、好みは人それぞれなのでしょうがない。

 

人を選ぶ漫画であることは重々承知している。

 

でも、私は好きなんだ。

お薦めです。

以上。

 

 

 

 

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